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2024/05/17 (Fri.)

2009
04
15

第2話。

アバロンに到着してから数日が経っていた。
皇帝になるための儀式もなんの問題もなく終了した。
今は主に内政について臣下達から指導を受ける形になっていた。

「陛下、こちらにおいででしたか」

「タンクレッドさん」

「まだそうお呼びになるのですか・・・」

「これが私なんです、ご容赦ください。ところで今日は外出の予定は無かったはずですが」

しばらくは遠征の予定がないため、アズィーザの護衛は主に一般兵が交代でつくようになっていた。
別の仕事があるのでここ最近はタンクレッドはアズィーザから離れて行動していた。

「実は陛下に拝謁したいという者が居るのですが・・・」

「私にですか?別に構いませんが」

「ありがとうございます、どうしてもと言うもので・・・」

そう言いながらタンクレッドは視線をやや下に向けながら困ったような口調で話す。
あまりこういう表情をすることがないので新鮮で面白いとアズィーザは微笑んでいた。

タンクレッドに連れられ、城内の一室に案内される。
兵たちの家族などの面会につかわれる部屋らしい。

「本来なら向こうから陛下の元に参じるものなのですが、申し訳ございません」

「構いません、その方も他の方たちに見られながらは話づらいと思いますし」

部屋に入ると窓に佇む長身の男が1人。
アズィーザ達の気配に気がつき、こちらに振り返る。

「貴女が・・・お初にお目にかかります、コウキンと申します
 まさかこんなに可愛らしいお嬢さんだとは思いませんでしたよ」

「初めまして、アズィーザです」

「タンクレッド無理を言って悪かったね」

「・・・陛下はお忙しい方だ、これきりだぞ」

わかっているよ、というような表情でコウキンと名乗った男は意味深な笑みを浮かべる。

「タンクレッドとは付き合いが長いんですよ、よく無理を言っては困らせてます」

「そうなのですか、でもあまり困らせてると思っていませんね?」

「さすが、鋭いですね陛下」

アズィーザの切り返しに満足したかのようにコウキンは手を叩いた。
そして一呼吸置くと表情を変える。

「さて、陛下。遠征のためのわずかな供は決まっておいでですか?」

「いいえ、まだ具体的には。タンクレッドさんにはできればお願いしたいと思っていますが」

タンクレッドをちらりと見ながらアズィーザは言った。
『御心配は要りません』そんな顔をタンクレッドはしていた。

「そうですか、もし気が向かれたら私を連れてはもらえませんか?
 術には多少自信があるのですが」

「術以外にも色々自信がおありのようですね、考えておきます」

「いい返事をお待ちしておりますよ」

 


「陛下、先ほどはコウキンが大変失礼を・・・」

「失礼ですか?ああいう方は嫌いではありませんよ」

やはり視線をやや下に向けながらタンクレッドは申し訳なさそうにしていた。
よほどコウキンに逆らえない何かでもあるのだろうか?
あまり勘ぐるのもよくないと思い、アズィーザの疑問はひとまず終了した。

「そういえば、供のことを考えていませんでしたね。どうしましょ・・・」

「おや、珍しいなタンクレッドが女の子を連れてるなんて」

2人の会話を遮り別の人物の声が聞こえてきた。
声の方に視線を向けると派手な格好で大剣を携えた男が立っていた。
紫と黒の髪の毛がとても目立っている。

「あれ、よく見たら皇帝陛下じゃないですか。すみません気がつかなくて」

「ハーキュリーズ!!なんだその物言いは!!無礼であろう!!」

「ははっ、すみません。あまり人の顔を覚えるのが得意じゃなくて」

「いいえ、お気になさらず。初めましてアズィーザと申します。
 ハーキュリーズさん・・・?」

「名前を呼んでもらえるなんて嬉しいですね、ありがとうございます。
 俺は傭兵部隊に所属してますんで」

そう話してる間にもタンクレッドの怒りは納まってはいなかったのだが。
ハーキュリーズはそんなこともお構いなしに、アズィーザに腕には自信があるだの天術が得意だの自己紹介を始める。
そう話す彼はとても楽しそうに見えた。

「とても楽しそうですね、なんだか羨ましいです」

「よく言われます、楽しいことばかりじゃないですけどとりあえず笑ってれば楽しく
 なるんじゃないかな?って思ってるんですよね。
 だから陛下も笑ってください、ね!」

「ふふ、そうですね」

「機会があったら声かけてください、俺も力になりますよ」

ハーキュリーズは終始笑顔のままだった。それがとても印象に残った。
それと去り際にある場所の情報を告げて立ち去って行った。


「ハーキュリーズ・・・余計なことを・・・」

「余計なこと?何故ですか、役に立ちそうなのに」

ハーキュリーズが情報をくれたある場所、シーフギルドである。
何代目かの皇帝がアバロンを拠点にしているシーフ達の協力を得て、七英雄の配下が守っていた運河要塞を攻略したと教えられたことがある。
シーフ達はそのまま帝国に協力しているのだが。

「正直言ってあまり陛下には裏の仕事までは知ってほしくなかったのですが・・・」

「ご心配は嬉しいのですが・・・すべての仕事を把握するのも皇帝の仕事だと思ってますから」


地下墓地、隠し通路を抜けてついた先にシーフギルドがあった。
帝国近衛兵長の登場にシーフ達のざわめきが聞こえる。

「兵長さんいらっしゃい、今日はなんのご用?」

「新たに即位された皇帝陛下がお前達の仕事を見たいとの仰せだ」

「あらっ・・・失礼しました、皇帝陛下」

「アズィーザです、シーフの皆さんよろしくお願いします」

アズィーザが頭を下げると、奥にあるカウンターからかすかに笑い声がした。
まだ10代くらいの少年がカウンターに腰を下ろしこちらを見ている。

「へぇ、話は聞いてたけど本当に女の子とはね」

「貴方は・・・?」

「あんまり厄介事にかかわりたくないんだよね、皇帝陛下とかいかにもすぎる」

「貴様っ・・・」

タンクレッドが声を荒げるが、少年はまだ笑っている。

「ま、名前くらいは教えてあげてもいいよ。俺はスターリング」

「そう、私はアズィーザ」

「さっき聞いてたから知ってるよ、わざわざご丁寧にどうも」

今にも飛びかかりそうなタンクレッドを制しながらアズィーザはスターリングという少年と話を続ける。

「若く見えるけど、貴方歳はいくつ?」

「えっ・・・18だけど?」

「そう・・・ふふ、年下のくせに生意気・・・」

その場の温度が一瞬下がった気がした。
スターリングもさっきまでの余裕の表情に少しだけ変化が見える。

「厄介事に関わりたくないのは面倒なのかしら・・・それとも恐いの?
 どちらでも私には関係のないことなのだけど」

「結構・・・言うタイプなんだ、意外・・・」

「貴方ほどじゃないと思うのだけど」

「うーん、陛下のほうがすごいと思うけど」

 

 

「最初はコウキンさんにお会いするだけだったのに、随分予定が変わってしまいましたね」

「まさかシーフギルドにまで行く羽目になるとは思いませんでしたが・・・」

「でも、これで決めました」

「決めたとは・・・?」

「もちろんあのことです」

後日、皇帝直々の書状が数名の元に届くことになる。

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2009/04/15 (Wed.) Trackback() Comment(0) 本編。

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